協会に寄せられたオオカミに関する質問とその回答

小学生から協会に寄せられたオオカミに関する質問とその回答をまとめたものを掲載いたします。



@しれとこ100平方メートル運動の森・トラストの狼以外の復元対象生物の候補の動物は何ですか?

 しれとこ100平方メートル運動の森・トラストは、知床半島にある斜里町の町長の呼びかけで1977年に始まった「しれとこ100平方メートル運動」という運動の一環で、1997年から進められています。 「しれとこ100平方メートル運動」は知床国立公園内の開拓農地を日本全国の市民が協力して買い戻し、失われた自然を復元しようというものです。 なお、日本オオカミ協会と直接の関係性はありません。

 100平方メートル運動の森・トラストの中の、森林再生専門委員会が中心となって自然復元に取り組んでいるようです。 すでに、第一次復元対象生物として、ヤマメ(サクラマス)の放流が1999年より行われています。 第二次復元対象生物として現在検討されている種は、鳥類がシマフクロウ、オジロワシ、オオタカ、クマゲラ、マダラウミスズメの5種、ほ乳類がオオカミとカワウソの2種です。 このうち5種の鳥類は運動地内での生息は見られないものの、北海道内には生息しています。 一方で、オオカミはすでに日本では絶滅種となっていますし、カワウソも生息が確認された最後の記録から30年近くが経っているので、事実上絶滅していると考えられます。




Aなぜ日本に狼を導入しようと思ったんですか?

 オオカミの再導入は、人間が犯した「自然破壊」という罪を償い、自然を元に戻す「自然再生」という活動の中でも重要な一つとして位置づけられます。

 自然は水、土、空気などの生物以外の物質(無機的環境といいます)と生物によって構成されています。 これを「生態系」といいます。 この生態系の中を食物連鎖という食うものと食われるものの関係を通して、物質とエネルギーが移動していきます。 日本の自然生態系において、オオカミはこの食物連鎖の最終段階にいる動物なのです。 このオオカミがいない生態系では、食物連鎖がオオカミの一つ前の段階で止まってしまい、物質とエネルギーがその段階に溜まってしまうのです。 この食物連鎖が途中で止まってしまっていることをよく表している現象が、オオカミの食べ物であるシカの増加です。 今、日本の多くの森では、捕食者を失ったシカの数が増え、過密状態になっています。 シカが適度に生息しているとその森に生息する植物の種の多様性(種の多さ)はいない場合よりも高くなりますが、増えすぎたシカは大好きな植物から順に食べつくし、植物の種類と数をどんどん減らしてしまっています。 シカが食べたせいで森が一部無くなってしまった場所もあります。 森が無くなってしまうと、シカの食べ物が無くなってしまうだけでなく、森に生息する鳥やほ乳類、昆虫などの他の多くの生物も生きていくことができなくなってしまいます。 また、シカが増えすぎると、土壌の流亡(土が流れてなくなること)、山地崩壊、河川湖沼の汚濁、土が海に流れ出すことによる沿岸生態系の破壊、海洋生物の減少の原因にもなります。 シカのためにも、他の生物のためにも、シカを食べることでシカの数を健康な状態に保ち、日本の森林の生態系を元に戻してくれるオオカミが必要なのです。





B昔、日本には何種類のオオカミが生息していたの?

 生物は「種」という単位で分けられています。 この「種」で見ると、日本にいたオオカミはハイイロオオカミと呼ばれる種の1種類のみで、正式にはCanis lupusという学名がついています。 日本にかつて生息していたオオカミも、現在アジア、ヨーロッパ、アメリカなどに生息しているオオカミも、種としては同じハイイロオオカミ(Canis lupus)です。 つまり、日本のオオカミと同じ種類のオオカミが中国やシベリアに今でも生息しているのです。
 「種」はいくつかの「亜種」に分けられることがあり、ハイイロオオカミも複数の亜種に分かれるといわれています。 「亜種」の単位では、かつて日本に生息していたオオカミは、エゾオオカミとニホンオオカミの2種類です。 エゾオオカミは北海道に生息していました。 ニホンオオカミは本州から九州までの日本列島に生息していました。





C日本に生息していたオオカミが絶滅した原因は?

 エゾオオカミ:
もともと北海道に住んでいたアイヌの人々はエゾオオカミを畏敬し、ウォセ・カムイ(吠える神)と呼んでいました。 しかし、北海道に生息していたエゾオオカミは明治時代に北海道に入植してきた和人(=日本人)によって絶滅させられました。 まず、和人はオオカミの主食であるシカを乱獲しました。 食べ物を失ったオオカミは和人が(始めた牧畜で)飼養していた家畜を狙うようになりました。 牧畜は鎖国を解いた明治時代以降、西洋の文化とともにもたらされたもので、それまでは行われていませんでした。 そのため、オオカミが家畜を襲う害獣であるという意識は、それまでは和人にもありませんでした。
 オオカミは北海道開拓にとって大きな邪魔者とみなされ、北海道から絶滅させることになりました。 毒餌を散布したり、オオカミに高額な賞金を賭けて捕獲したりしました。 そうして、オオカミに賞金が賭けられてからたった12年後の1889年の記録を最後に、北海道でオオカミの生息が確認される事はなくなりました。


 ニホンオオカミ:
 エゾオオカミを絶滅に追いやった和人、つまり本州以南の人々も昔からオオカミを嫌っていたわけではありません。農耕を営む日本人にとって、オオカミは田畑を荒らすイノシシやシカを退治してくれる守り神でした。しかし、18世紀の中頃に狂犬病という病気が海外から侵入すると、人々のオオカミに対する認識が変わってしまいました。
 それまでは穏和と思われていましたが、狂犬病にかかったオオカミは人を襲うこともあったので、凶暴な動物と思われるようになったのです。 また、同時期に高性能の銃器が開発されていったことも、オオカミ絶滅の大きな要因となりました。 “凶暴化した"オオカミは撃ち殺される対象になりましたし、オオカミの食べ物であるシカも高性能の銃により乱獲され、数が激減しました。 江戸時代後期になると農業技術が進歩して、自然に依存しようという気持ちが薄らいだため、オオカミが田畑を守る神様であるという意識も、それに伴って薄らいできていました。
 明治時代になってすぐに「赤頭巾ちゃん」などの童話に代表されるオオカミを敵対視する西洋の文化が導入され、英語のテキストにも採用されました。 こうして、オオカミは悪者であるという考え方が普及し始めたことも、オオカミ駆除に拍車をかけたと考えられます。
 さらに、イヌとの接触により、ジステンパーという伝染病が蔓延したことも、絶滅の原因の一つと考えられています。
 ニホンオオカミは今からちょうど100年前の1905年に捕獲された個体を最後に、その生息が確認されていません。 このように、ニホンオオカミの絶滅はいくつかの原因が重なって起きたものと考えられていますが、どの原因にも人間が関係しているといえます。








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