皆伐された林 [風景も生態系も劣化させる人工林はオオカミにとっても住み難い] これまで人工林は、「皆伐・同一樹種同齢木一斉造林」といわれる方法で作られてきました。 これらの人工林は、手入れがされないで放置されると、込み合ってひょろひょろの林になり、ちょっとした風、雪で将棋倒しになったり、大雨が降るとすぐに土壌が流れ出したり、斜面崩壊が起きたりします。 人工林は、もともと生物多様性が低いのですが、荒廃林はもっと生物の住みにくい環境になっています。 黒々とした単調な針葉樹林に覆われている風景は、新緑も紅葉もなく、まるで殺風景です。こうした荒廃人工林は、今、大きな環境問題となっています。 荒廃林化の背景にはいろいろな社会的問題が存在します。 木材の供給はどうしたらよいのでしょうか。 またこれらの人工林に頼って収入を得ようとしていた林業従事者の生活はどうなったのでしょうか。 かつての有名林業地では、借金までして植林した篤林家が借金の返済に窮して夜逃げをしたなどといった話しを聞くことも珍しくありません。 野生生物など自然保護はどうするのでしょうか。 生き物が少ない荒廃林は、もちろん、オオカミにとってもよい住処ではありません。
鬱閉した人工林 [荒廃林再生] ここ数年、その対策として荒廃林再生が注目され、政党のマニフェストにも取り上げられています。 荒廃林再生と一口に言いますが、その内容は大きく分けて二つになります。 一つは、木材需要を睨んで人工林本来の目的である木材生産機能を取り戻すとともに山村の振興も狙おうというもので、本来の人工林施業を行うことを目的にしています。 もう一つは、従来の林業と人工林のあり方に疑問をもち、荒廃林を環境機能豊かな森林=天然林に返すことを目的とするものです。 人工林を維持する再生(人工林維持型)は、人工林を荒廃させた原因を取り除かなければ達成することが出来ません。 それは資金と労働力の欠乏です。 これらはいろいろな工夫によってクリアできるとして、次に問題になるのは人工林の生態系への生態学的な影響です。 実は人工林では土壌の貧栄養化が著しく、人工林を伐採して再び人工林を仕立てると以前のようなには生育しなくなるのです。 また、人工林では林床を覆う植生が繁茂しにくくなるので、剥き出しの地面は土壌の流出が大きく、豪雨によって簡単に山崩れが起きてしまいます。 「人工林維持型再生」によって以前のように手入れが行き届くようになったとしても、土壌の肥沃土の疲弊や流亡、生物相の貧困、景観の悪化はそのままで、もちろんオオカミの生息にとっても良いわけはありません。 一方「環境林型再生」ではもともとあった森林生態系に近づける回復によって、人工林に付随した生態系の劣化、災害の発生が大きく抑制され、生物多様性が大きくなり、オオカミの生息にとっても具合がよくなります。 したがって「環境林型再生」は「狼(オイ)の森」づくりに通じるといってよいでしょう。 地域を選んで、環境林型再生に木材生産のための施業を工夫すれば林業の再生にもつながります。
人工林から天然林へ [資金と人、そして実行] 人工林再生には、いずれにしても、資金と人が必要です。 NPO法人「森林再生基金(仮称)」の設立に関する慶応大学経済学部長の細田衛士さんの提案が朝日新聞に紹介されていました。 企業から基金を集めて社団法人日本林業経営者協会のメンバーが、人工林の所有者に代わって作業にあたるのだというのです。 企業貢献に期待するこのアイデアの可能性を期待したいものです。 林業経営者協会はすでに環境省系の「環境再生保全機構」の援助を受けているといいます。 「自然再生法」も出来て、自然再生に向けての社会的な合意が整いつつあるようです。 日本の社会も自然再生の時代に入ったのでしょう。 しかし、荒廃林は全国にわたって広大です。 公私にわたり、いろいろな団体、組織、それに莫大な資金が必要です。 どんなに大変でも取り組まなければならない公共的な仕事です。 日本オオカミ協会の活動目標「狼の森づくり構想」も荒廃林再生事業に貢献します。 しかし、考えているだけではダメ。 それぞれの地域で会員それぞれが、具体的に考え、実際に活動することが必要です。 昨年視察した世界遺産の修験道がある奥熊野一帯も荒廃林だらけ。 オオカミの復活と併せて再生事業が必要です。 今春、十年ほど前、NHKTVのオオカミ番組で対談したことがある柳生博さんに久しぶりにお会いしました。 熊野の旅行からお帰りなったばかりの柳生さんは、どこまで行っても真っ暗な人工林に辟易されたという感想。 環境林化の必要性を話し合って意気投合。 さあ、皆さん、具体的に考えて、すぐに活動開始です。 |